研究概要 |
ハミルトン力学系のカオス運動は,従来単一のエルゴ-ド成分(ルベ-グ測度)で記述できるものと考えられて来た。しかし、相沢は、近可積分系の研究から、それが多重エルゴ-ド運動であることを理論的に示した。その結果として、カオスの一つの特性量であるリャプノフ指数が一般のハミルトニアン系では零であることを数値計算によっても確めた。また、それに伴う中心極限のやぶれをLorge Deviation Theoryの立場から説明することができた。また、ハミルトン系の多重エルゴ-ド性を生み出す力学系の構造は、KAMト-ラス及びP.Bト-ラスの自己相似的な分布に由来するという予想の下に数値計算を行い、スケ-リング則が実際にあることを確め、そのスケ-リング指数を決定することができた。 斎藤は、分布関数のt→∞の極限での挙動から、エルゴ-ド性を論じた。一般に、t→∞の極限で分布関数が一定値(一様分布)に達すれば、エルゴ-ド性が成立することが示される。可積分系でト-ラスの上でのエルゴ-ド性は、その極限を長時間平均であるとすればよい。非可積分系では、分布関数は、どの点でも収束しないが、法則収束の意味で収束し、それが一定値であれば、エルゴ-ド性、混合性、エントロピ-の増加を示すことができる。このことは量子系でも成り立つが、h→0,高エネルギ-の極限が必要である。多自旧度系では最後の条件はゆるめられることが期待される。 首藤は、古典的に最も強いカオスを示すスタジアムビリヤ-ド系のレベル統計を調べ、リアプノフ数(対応する古典系)の大きさが、分布の収束速度に反映することを示し、レベルの統計測において、何が普偏的で、何が普偏的でないかを明らかにした。
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