研究概要 |
初年度に引続き,近地地震のデ-タ収集・整理を行うとともに,それらの解析を行った。今年度は,とくに横浜市立大学の広帯域地震計観測網(4地点=横浜・高尾・箱根湯本・千葉)が稼動を開始したため,地震波デ-タが飛躍的に増大した。 また,デ-タ解瀬の手法においても大きな進展があった。震源が浅い場合には地震動に与える構造の影響が大きく,その評価にあたっては波動論的な扱いが必須である。これに対し,震源が深い場合には,観測波形からも予想されるように,波線論的な扱いが可能である。この場合,計算時間がはるかに短いだけでなく,観測点ごとの地盤構造の扱いが容易である。これらを考慮して,浅発地震用と稍深発・深発地震用の2つのプログラムを開発した。これにより,地震波解析の能力が飛躍的に高まり,いわゆる準リアルタイム解析が可能になった。 これまでおよそ40個の近地地震について波形のインバ-ジョンを行い,断層メカニズム,地震モ-メント(Mo),および,破壊継続時間(τ)を求めた。近地地震については観測網4地点のうち2点以上の記録が使用可能であれば,十分信頼できる解が得られ,波形インバ-ジョンの威力が示された。 解析した地震のモ-メントはMo=3×10^<20>〜9×10^<25>dyn.cmの範囲にわたる。この範囲で深さ50km以深の地震について見ると,ほぼMo〜τ^3の比例関係が成り立つことがわかった。浅い地震についても,ばらつきは大きいが,同様の比例関係があることが示された。 モ-メントと破壊継続時間の平均的な関係が得られると,今度は逆に,特異な地震(高応力または低応力を伴う地震)の検出ができる。こうして,1990年8月5日の小田原地震,91年11月19日の東京湾直下の地震が,異常に高応力降下を伴ったこと,逆に92年1月5日の三浦半島直下の地震(マントルウェッジ内)は異常に低応力降下を伴っていることなどがわかった。
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