研究概要 |
海洋の深層熱塩循環は三次元数値実験を主な手段として調べられてきた。本研究では簡単な模型を用いて基礎力学を明らかにしていくことを目標とする。βー面だけでなくfー面も系統的に考察したので広く深い理解が得られた。以下では,主としてβー面の結果を,最も重要な鉛直第1モ-ドについて述べる。 1.内部域では,密度方程式で鉛直移流と鉛直拡散が平衡する。渦度で云えば惑星渦度移流と渦柱伸縮が釣り合う。その意味ではSverdrup平衡となる。非一様な湧昇であることを除き,Stommel理論と同様である。鉛直流は底層で湧昇になる。 2.西岸境界層の構造が密度拡散のために変化する。再循環を伴う粘性型と指数型の拡散型の二種類がありうる。どちらになるかは密度成層ユリオリ係数,鉛直モ-ド数などに依存する。赤道域では殆んど粘性型になる。 3.赤道(極)向きの西岸境界流では沈降(湧昇)流が起こる。一方,境界のすぐそばでは粘性が強く効き,逆向きの鉛直流が生じる。境界層流の構造変化に付随する鉛通流は渦位を用いて力学的に説明できる。 4.密度拡散のために,内部域にも広い沈降域が現れることがある。この不思議とされていた現象も渦位を用いて力学的に説明できる。 5.高次モ-ドでは変形半径が小さくなり水平拡散が効き,幅の広い拡散型の西岸境界層が形成される。その結果,沈降流が底層の広い領域で生じることがある。但し力学自体は西岸境界層で伸べたとおりのものに留まる。 6.海底地形の影響を海山・海谷を例にとって調べた。等地衡線が閉じている場合には臨界点が現れる。海山か海谷かによらず,その内部では低圧性の循環を生じる。その他は,平担な場合と同様になる。
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