日射量の変動に伴う接地境界層の応答を研究するため、本年度は水田上と裸地の上で観測を行なった。観測には超音波風速計、赤外線湿度・炭酸ガス変動計、熱電対乾湿計を用い、運動量・顕熱・水蒸気・炭酸ガスの乱流輸送量を求めた。また、日射量、放射収支量、地表面温度、気温の鉛直分布もあわせて測定した。 水田での観測は7月末から8月にかけて行なった。稲の高さは60cm程度であったが、水が充分にある状態からほとんどない状態までの様々な条件での観測を行なうことができた。水田の水の状態によって、地表面の熱容量が大きく変化すると考えられるので、これが接地境界層の応答を支配する重要なパラメ-タになると期待できる。このときのデ-タから水が充分にある場合の方が顕熱輸送量と蒸発散量は小さく、炭酸ガス輸送量は大きくなるという結果が得られた。これらの結果は気象学会と農業気象学会で発表した。 9月初旬に裸地面の上で観測を行なった。この時は地上1.5mまでの気温変動の鉛直分布を詳細に測定した。幸いにもこの時は日射量が一日のうちで激しく変動し、理想的な条件であった。この時の乱流輸送量には明らかに日射量の変動に伴う変化が検出され、また気温変動の鉛直分布にも日射量の変動が地表面温度にまず影響を与え、それが接地境界層内で、影響が徐々に上層に伝播してゆく様子をとらえることができた。これらについてさらに解析を継続中であり、気象学会の春季大会で発表の予定である。 土壌水分量の測定については購入した測定器の取扱いに慣れていなかったため、現在までのところ結果は得られていない。次年度に継続して研究を進める予定である。
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