今年度は昨年度に裸地上で行なった観測の解析を詳細に行なった。特に地表面付近の気温変動のプロフィルを細かく測定し、これが日射量の変動に対応してどのように変化しているかについて調べた。 1990年9月初旬、裸地(グランド)上に超音波風速計、熱電対乾湿計、赤外線炭酸ガス・水蒸気変動計を設置して乱流輸送量の観測を、また多点の熱電対を地表から約1.3mまでの範囲に対数的に配置し、気温変動のプロフィルを測定した。観測期間中で典型的な日射量の変動が見られた9月4日11時15分から25分間の日射量と地表面温度、高さ1.28mまでの各高度での気温変動の様子をみると、日射量は積雲の通過に伴ってステップ状の変化を繰り返しており、それにともなって地表面温度が変化し、さらにそれが上層の気温の変化に少しずつ遅れをもって、つながっていることがわかる。地表面から離れるにつれて気温変動自身が小さくなることと併せて、10℃以上にわたって変化する地表面温度の影響が徐々に小さくなっていることがわかる。このことを定量的に見るために、この間の1分毎の平均値を作り、その高度分布をみると、地表面から離れるにつれて10℃から2℃まで振幅が減少して行くことがわかる。 日射量がステップ状に変化するとして、地表面温度がどれくらいの応答時間で変化するかについてこの時のデ-タをもとに試算してみると時定数は2分〜2.5分という値が得られた。 これらの観測事実から、日射量の急増によって、まず地表面温度が上がり、そのために地表面付近の気温変動が大きくなる。さらに、その気温の乱れの増加によって地表面からの顕熱輸送量が増大し、これが最終的に気温の上昇を引き起こす、といったメカニズムが明らかとなった。
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