日射量変動に対して地表面がどのように応答し、それが上空の大気中にどのように伝わってゆくか、について調べた。 種々の地表面における測定結果をまとめると、地表面の熱容量の大きい海面上では日射量の変動によって接地境界層の性質が影響を受けることはほとんど考えなくて良いことがわかった。しかし、水田や畑地、裸地面ではその影響が顕著に見られるこが実証された。水田上での解析結果によると、鉛直方向に輸送されるスカラ-量のうち、顕熱輸送量が最も大きな影響を受け、次いで水蒸気と二酸化炭素が同程度に影響されることがわかった植物がある場合には地表面の物理的性質だけでなく、植物の生理的反応についても考慮する必要がある。 また、裸地面上で気温の鉛直方向の分布を細かく測定したところ、日射量の変動に伴って地表面温度が2分程度の時定数で追従することがわかった。そして、高さ1.3mまでの範囲ではこの地表面温度の変化が少しずつ遅れをもって上に伝播してゆくが、地表面に接した気温は地表面温度とともにどこまでも上昇するとは限らず、場合によっては地表面温度の極大よりも先に気温の極大を迎えることがあることがわかった。 これらの観測事実から日射量の特増によって、まず地表面温度が上がり、そのために地表面付近の気温変動が大きくなる。そしてその気温の乱れによって地表面からの顕熱輸送量が増大し、これが最終的に気温の上昇を引き起こす、といったメカニズムが明らかとなった。 今後は顕熱輸送量の高度分布の測定と、今回うまくできなかった土壌水分量の測定とを含めて種々の地表面でのパラメタリゼイションに向けた研究を進めて行きたい。
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