本年度は、海洋大循環数値モデルとして、順圧モデルと1.5層モデルの2種類のモデルを開発した。そして、1960〜1986年の各月ごとの風のデ-タから風応力の気候学的月平均値を計算し、この風応力デ-タを駆動力して用いて上記のモデルを時間積分した。順圧モデルから得られた結果は、漂流ブイの軌跡あるいは船の偏流デ-タから得られる表層循環像と良く一致していた。特に、黒潮、黒潮続流、北太平洋海流などを含む亜熱帯循環が、季節によっては2つの循環に分離する事は興味深い。また、日本南方での流量の変化が、名瀬ー西之表間の潮位差変動と良く対応している点も特筆される。一方、1.5層モデルに関しては、まだ風の全平均値しか用いていないが、地衡流計算から得られる北太平洋表層循環場との対応は非常に良く、亜熱帯循環だけではなくカムチャッカ循環、アラスカ循環も再現されている。次に、海面での地衡流場を1000dbを基準面として計算し、また風のデ-タから海面でのエクマン流も計算し、両者を合成する事により海面流速場を作成した。そして、この海面流速場を用いて漂流ブイ軌跡のシミュレ-ションを行った。さらに、この海面流速場を初期予測値として用い、漂流ブイデ-タを修正法によってこの流速場に同化する事を試みた。その結果、修正法によってデ-タアシミレ-ションをする事により、漂流ブイの軌跡を予測する精度は大幅に向上した。しかし、漂流ブイの対象海域に対する密度が大きな影響を与える事もわかった。さらに、GEOSAT/windデ-タの解析も行い、風速値がデ-タ密度と密接に関連していて必ずしも正確な風速値を与えていない事を示した。また、他の船上観測による風速デ-タとの比較検討も行った。その結果、両者は熱帯域では比較的良く一致し、中・高緯度域では差が大きく相関も低いという事がわかった。
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