研究概要 |
本年は昨年にひき続き、積雲のKesslerのパラメタリゼーションを含む二次元海風モデルを開発した。本研究では一般風の弱い場を考え,海風の積雲形成に及ぼす影響を調べた。最初にモデルをチェックするため粗い計算を行った。領域は水平x=128km,鉛直Z=4kmとして,メッシュ幅は△X=4km,△Z=200mとした。海風と局地的隆雨の関係を見るため、初期(午前8時)の相対湿度が下層で60%と100%の場合について比較した。その結果60%程度の乾燥した大気の下では海風に伴って積雲が発生しなかったが,下層が高湿度の不安定な大気では昼間積雲が発達した。積雲は海風の最大上昇流の位置より少し海側寄りに発生し,海風の上昇流が,積雲発達のトリガーとして働くことが分かった。積雲の発生と伴に潜熱が放出され温度場は大きな変調を受ける。本計算においては積雲形成による上昇流のピーク値は,海風本来の上昇流(約0.2m/s)と比較すると非常に大きく(約10m/s)流れの場を支配した。積雲形成後は海風循環は攪乱を受け流れのようすは異ったものとなった。 さらに,積雲が複雑な構造を持つこと,積雲の発達に鉛直方向の運動が重要であることから,水平メッシュをより細かく(△X<1km),かつ鉛直計算領域を拡大(Z=7.5km)し計算を行なった。しかしながら,微細格子を用いた計算は不安定であり,〓粘性の取り扱い,側壁の境界条件の取扱いなどで問題が残った。また海風の上昇流の大きさは積雲形成にとって重要であると思われるが,上昇流のピーク値は水平格子幅と水平拡散係数に大きく依存することが分かった。 最後に本研究を通して言えることは,海風循環が夏期の積雲形成において重要な役割を果たしうることが分かった。
|