前年度製作した電気化学水晶振動子マイクロバランス法の感度を2Hz(測定時間間隔0.4秒)から0.1Hz(同0.1秒)まで向上させた。これにより、当初の目的であった電極表面における吸着単分子層の微細構造解析が可能になった。種々の系について検討を行っているが、これまで特に下記の3つの系のついて成果がまとまった。いずれも、得られた質量および電流応答の詳細な定量的解析によって明らかになったものである。 1.白金電極における水分子の吸着および吸着酸素層の生成機構 他手法では測定が困難である水分子の電極表面への吸着や吸着量の電位依存性を明らかにし、電気二重層の微細構造についての情報をもたらした。アニオンの特異吸着は検知されず、水とは吸着の質が異なることがわかった。また、吸着酸素層の酸化生成/還元脱離の微細機構を吸着水分子との関わりから明らかにした。 2.有機単分子層の生成および酸化還元機構 アルカンチオ-ルのセルフアセンブリング過程のその場追跡にはじめて成功した。初期のはやい吸着と続いて起こる遅い吸着によって配向の揃った単分子が構築される。末端の酸化還元中心の電気化学とそれに伴う質量変化から、強いイオン対の生成が明らかになった。イオン対生成や酸化にともなう溶媒の取り込みは、単分子層の構造と密接な関係があることがわかった。 3.ポリピロ-ルの酸化還元にともなうイオン移動の定量的解析 種々の電解質溶液中で電解重合したポリピロ-ル薄膜について検討した。重合時のイオンサイズや電位に依存して電荷補償のために移動するイオンの種類が変わることを示しかつその移動量を定量した。
|