1.半導体レ-ザ-分光システムの制作 レ-ザ-分光の研究領域を近赤外領域へ拡張するため、光通信用に開発されている分布帰還型(DFB)半導体レ-ザ-素子を用い、近赤外領域(1.3及、1.5μm)の高分解能分光系を制作した。このレ-ザ-を広い領域を一度に掃引するためには、電流を一定にして温度制御方式としたほうが有利となるので、制御系の応答関数をふまえたコンピュ-タ-による能動制御方式を試みた。 2.時間分解測定系の製作 研究対象である準安定分子を高い濃度で生成する手段としてパルス放電法を用いた。これは有限の寿命をもつ短寿命分子種の検出に対して有利な時間分解法を用いるためである。パルス放電で生成した短寿命種の過渡吸収波形をトランジェントメモリ-を用いてサンプリングし、パ-ソナルコンピュ-タ-に高速転送する。その後、実時間の積算処理あるいはゲ-ト処理を施すことによって時間軸あるいは周波数軸のスペクトルを得た。 3.新しい周波数の較正法の開発 近赤外領域での周波数の絶対較正に新しい手法を開発した。即ち、半導体レ-ザ-素子自身の非線形効果によって生じる可視領域の第二高調波でヨウ素分子の標準吸収線を基本光と同時に測定することで基本光の周波数を決定した。この方法の開発により従来、近赤外分光の欠点であった周波数較正の問題点を解決することができた。(論文投稿中) 4.分光学上の研究成果 まず、初めに水とアセチレン分子の重音バンドを測定し、この装置の分解能と検出感度を見極めた。その後、目的である準安定励起電子状態の検出を試みた。最初は窒素分子のリドベルグ準安定電子状態を測定し、リドベルグ電子に起因するスピン微細構造や、回転量子数依存性のある前期解離過程を見出した(論文投稿中)。次に、一酸化炭素分子の高励起電子状態のスペクトル観測したところ、純粋な単一電子状態としては解釈できず、複数の電子状態との混合状態であることがわかった。また、パルス放電と時間分解分光法の特徴を生かした励起状態の寿命による分類はスペクトルの帰属に非常に有力な手法であることを示した。
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