研究概要 |
前年度までの研究において開発した無隔膜型衝撃波管とエキシマ-レザ光分解法を組み合わせた反射衝撃波中での光分解装置を用いて、今年度は特にエチニルラジカル(C_2H)とアセチレン及び水素との反応速度定数、及び水素原子と硫化水素の反応速度定数を広い温度範囲にわたり直接に測定し、以下の結果を得た。 1)C_2Hラジカルをアセチレンの193nm(ArFレ-ザ)の高温光分解により生成し、エチニルラジカルとアセチレン、及び水素分子との反応により生成する水素原子の増加速度を原子共鳴吸収法により測定してこれらの反応の速度定数を高温において始めて直接的に決定した。エチニルラジカルとアセチレンの反応速度は温度依存をもたず反応障壁のない反応であるが、エチニルラジカルと水素原子の反応速度の温度依存は単純なマレ-ニウス式では表現できず高温程活性エネルギ-が大きくなる。また生成物である水素原子の収率の測定からC_4H_3,C_2H_3等の付加生成物は生じない事を明らかにした。分子軌道法計算によりエチニルラジカルと水素分子の反応の遷移状態を計算し、遷移状態理論による速度定数の計算から比較的高温においてもトンネル効果が重要である事を示した。 2)水素原子を硫化水素の193nm光分解により生成し、水素原子と硫化水素の反応速度を広い温度範囲にわたり直接的に決定した。この反応の速度定数の温度依存も単純なマレ-ニウス式では表現できない。分子軌道法計算による遷移状態の構造の決定と、遷移状態理論による速度定数の計算から、高温における活性化エネルギ-の増加は遷移状態がル-ズである事による大きな振動分配関数の温度依存による事、また1000K以下での反応速度にはトンネル効果が大きな影響を及ぼしている事を明らかにした。
|