研究概要 |
高温における化学反応素過程の速度定数を直接に測定するために、反射衝撃波中でのレ-ザ光分解法を新規に開発した。この方法を用いてO,N,H等の原子を1000〜2500Kにおいてパルス的に生成し、高感度な原子共鳴吸収法を用いてこれらの原子濃度の時間変化を追跡して以下の成果を得る事ができた。 1.O_2及びCO_2を193nm(ArFレ-ザ)で光分解し、生成する酸素原子の収率を求めた。これらの高温光分解は振動励起状態からの光吸収によって起る事を明らかにし、振動励起状態の緩和時間を測定した。また励動励起したO_2(υ"∞__ー7)は248nm(KrFレ-ザ)によっても光解離する事を見い出した。 2.NOの193nm光分解によって生成するN原子の減少速度を測定しN原子と酸化窒素及び水素分子の反応速度定数を高温において始めて直接に決定した。 3.H_2Sの193nm光分解によって生成するH原子の減少速度からH原子と硫化水素の反応速度定数を広い温度範囲にわたって測定し、この反応の速度定数の温度依存が特異である事を見い出した。量子化学計算により遷移状態の構造とエネルギ-を計算し、遷移状態論を用いて速度定数を計算して実験値と比較して、この特異な温度依存性がトンネル効果と振動分配関数の温度依存に起因する事を明らかにした。 4.アセチレンの193nmの光分解により生成するエチニルラジカルとアセチレン及び水素分子との反応の速度定数を反応生成物である水素原子の濃度の増加速度から1000K以上で直接に決定した。水素原子の生成量の測定から付加生成物はこれらの反応で生成しない事を明らかにした。また水素分子とエチニルラジカルの反応では遷移状態論から同位体効果が重要である事を見い出した。
|