現在、書き換え可能な有機光メモリ-の実現が強く望まれている。そのために達成しなければならない問題点は、(1)着色、消色の量子収率が共に大きいこと、(2)光および熱に対する耐疲労性が高いこと、(3)着色型の吸収帯が半導体レ-ザ-の波長領域にあること、(4)読み出しによって記録の破壊が起こらないこと、などである。本年度には、この4点について以下の研究成果を挙げた。 (1)われわれは既にフリルフルギドに嵩高い置換基を導入するとフォトクロミック光変換の量子収率が増大することを報告した。フルギドのX線結晶解析、固体および溶液中のNMR、分子軌道計算を併用してコンフォ-メイションを明らかにし、その違いにより量子収率の増大を説明した。(2)自動化装置を作って紫外線照射による着色と可視光照射による消色の繰り返しによる疲労・劣化を調べた。フリルフルギドでは光照射耐久性はイソプロピル基の導入によって2ー3倍に向上する。イソプロピル基とアダマンチリデン基をもつフルギドが最も光耐久性に優れている。耐熱性はPMMA中よりもポリカ-ボネイト中の方が高い。(3)5ージメチルアミノインドリルフルギドの着色体の吸収は半導体レ-ザ-の波長領域にあるが、合成収率と光変換量子収率が低かった。反応試薬の改良により反応収率の向上、アダマンチリデン基の導入により量子収率の増大を達成した。(4)フォトクロミック光変換機能と記録読み出し機能を分子内の別の部分にもつチオインジゴ誘導体分子を設計し、その前駆体を合成した。
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