研究概要 |
本研究において当該年度に得られた実績は(1)装置の開発と(2)(BEDT)_4Ni(CN)_4の錯体の合成と物性の研究である。 (1)装置の開発 錯体単結晶の反射スペクトル測定用装置を開発した。浜松木トニクス社製分光器PMA10を使用し,これを顕微鏡と接合し,コンピュ-タ制御することによって,短時間で測定可能な反射分光光度計を制作した。これは従来の反射分光法では測定困難であった不安定結晶の測定を可能にするもので,その応用範囲は広い。 (2)(BEDT)_4Ni(CN)_4錯体結晶の合成と物性 BEDT(ビスモチレンヂチオテトラフルバレン)とKNi(CN)_4を原料とし,電解法によって合成した結晶は黒色柱状結晶で,その電気低抗磁性および光子は反射スペクトルの測定を行なった。電気抵抗の温度変化は室温で20Scm^<ー1>で,230Kから300Kの温度範囲で金属的な温度変化を示した。しかし,160Kから230Kでは温度変化はほとんどなく,160K以下では半導体的挙動を示した。すなわち160Kと230Kの間で金属一半導体転移が起こっている。単結晶のESPスペクトルを4Kー300Kの範囲で測定した。4KでのESRスペクトルとはg=2.013に強いバンドが,g=2.056に弱いパンド観測された。強いバンドはBEDTーTTFカチオンラジカルの不対元電子によるもので,弱いバンドは〔Ni^<III>(CN)_4〕^ーのd電子によるものである。d電子による弱いバンドの吸収強度の温度依存性はキュ-リ-則に従い,スピン遷なは全Niの0.01であることがわかった。
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