研究概要 |
ビスエチレンヂチオ-テトラチアクルバレン(BEDTーTTF)とK_2Ni(CN)_4を含むトリクロロエタン(TCE)溶液の電解酸化反応により,(BEDTーTTF)_4Ni(CN)_4単結晶を作成し,その構造解析,電気伝導度,およびESRの測定を行なった。 結晶は三斜晶系PIに属し,格子定数はa=10.994(2),b=16.443(2),c=9.703(1)A^^°,α=97.85(1)^0,β=115.15(1)^9,γ=95.95(1)^9,z=1である。BEDTーTTFの長軸はB軸とほぼ平行に配置し,BEDTーTTF分子は[Z^^ー01]方向に積み重さなった構造をとる。 単結晶の電気伝導度は室温付近でσ【similar or equal】20Scm^<-2>にもなり,230ー300Kの間で金属的な温度変化をする。しかし,230ー160 ^°ではσの変化はほとんどなく,160K以下で半導体的な挙動を示すことがわかった。すなわち,160ー230Kの間で結晶の相転移があると考えられる。 単結晶のESRスペクトルは4Kで,g=2.013(3300G)に強度の強いバンドが,g=2.056(3220G)に弱いバンドが観測された。g=2.013帯はBEDTーTTFカテオンの不対π電子対によるもので,g=2.056帯はNi^<III>のd電子によると帰属できる。すなわち,Ni原子の一部が2価から3価に酸化されていることがわかる。この酸化量を見積るために,ESR緑の温度変化より,その帯磁率に相当する量を求めた。その結果,酸化量は[Ni(CN)_4]^-イオン当りn=0.01となることがわかった。以上のことは,この(BEDTーTTF)_4[Ni(CN)_4]結晶中で,Niは混合原子価状態にあり,これがこの結晶の電気伝導度等の諸物性に重要な役割をはたしていると結論した。
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