Si(100)表面にCs、及びK原子を被覆しその上にNO分子線を衝突させ散乱してくるNO分子の振動励起状態の測定を試みた。しかし、アルカリ吸着表面では、吸着の方が散乱よりも圧倒的に大きく、その為一斉の散乱NO分子の測定は不可能であった。そこで、アルカリ原子の吸着促進用に関し、その機構解明を行うこととした。この吸着促進は、本質的には表面電子移動が関与しているので、表題のテ-マとは実際的にはつながっている。まず、オ-ジ工法(AES)により、各アルカリ被覆率に対する吸着確率の測定を行った。その結果、初期吸着確率Soは、Θ_Mに対してほぼ線形に増大することを確認できた。この事実は、アルカリ原子の吸着促進が局所的な形で発生していることを示している。又、NO吸着が進行するにつれて、NOの吸着確率は減少してくる。これは、アルカリ原子とNO分子が結合すると、その局所的なアルカリ促進作用が無くなることを示す。更に、レ-ザ-分光法により、散乱NO分子の増加挙動を、飛行時間(TOF)分布測定と強度測定を同時に行った。その結果、NOの初期吸着は、入射NOを吸着アルカリ原子の直接衝突の結果生じていることが判明した。直接衝突の結果生じているという根拠は、直接非弾性散乱成分がNOビ-ム照射の初期に於いて零であることより言える。 近年、Si上に吸着するアルカリ原子は、イオン化しておらず、むしろ中性的状態を保っていることが判明してきている。我々の結果は、入射NO分子の2π^*レベルへのアルカリ吸着原子の迴りの価電子の電子移動として吸着促進作用を説明出来ることを示している。一旦電子を受け取ったNO分子は直後、アルカリイオンと衝突し、運動エネルギ-のかなりを失う。すると、NO負イオンはそこでエネルギ-緩和を起こしてしまい、再び電子を表面へ戻して気相に跳ね返って来ることが出来なくなる。振動励起が、負イオン状態で実現されても測定することは出来ない。
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