研究概要 |
金属酸化物粉体表面のエネルギ-特性を明らかにする目的で,各種酸化物試料について主として水蒸気の微分吸着熱を測定した。この微分吸着熱の直接測定においては,吸着熱と吸着量と吸着量とを同時に精度よく測定する必要がある。特に固体表面の性質が直接反映される低被覆率での吸着量測定が重要であるので,高精度の圧力測定が可能なMKSバラトロン圧力測定器を取り付けて測定精度の向上をはかった。その結果つぎのような成果が得られた。すなわち,典型的な金属酸化物粉体について,室温および450℃で脱ガスした試料に対する水蒸気の微分吸着熱を28℃で測定して得られた微分吸着熱曲線(微分吸着熱vs.吸着量)は大別して2つのタイプに分類できることがわかった。1つは吸着量の増加とともに微分吸着熱は指数関数的に減少して単分子層完成付近で水の凝縮熱に達するタイプであり,この場合水の化学吸着サイトはエネルギ-的に不均一で,また化学吸着熱(表面水酸基生成熱)と物理吸着熱との差が小さいという特徴をもつ。これにはTiO_2,SiO_2,Al_2O_3,ZrO_2が属する。もう1つのタイプは,低被覆率の化学吸着領域において吸着熱は一定値(150〜160kJ/mol)を示し,また物理吸着熱との差がかなり大きいというもので,これにはZnO,SnO_2が含まれる。この場合化学吸着サイトはエネルギ-的に均一であり,生成された表面水酸基同士で水素結合を形成していることが示唆された。さらに,γーFe_2O_3について,25〜250℃で脱ガスした試料に対する水蒸気および一酸化炭素の微分吸着熱の測定結果から,この表面はエネルギ-的に比較的均一であるが,熱処理温度の上昇とともにその均一性が低下することがわかった。また,表面水酸基の生成速度は極めて遅く,表面の塩基性点も非常に弱いことが確認された。次年度においては,これらの結果と酸化物の表面構造との関係について明らかにするとともに他種分子との相互作用についても検討する計画である。
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