分子の特定の振動モ-ドを局所的に励起した場合に、単分子反応速度が通常の熱反応と比べてどのように異なるかは、励起するモ-ド依存するようである。理論的には多くのトラジェクトリ-計算がなされており、振動モ-ド間のカップリングが重要な役割を演じているようである。一方実験系では局所励起エネルギ-が大きい場合の研究はかなりなされているが、熱反応系にわずかな摂動が加えられた場合の実験例はない。今回の実験では、アクリロニトリルをアルゴンで数%以下の希釈した混合気体を衝撃波で約1500Kに加熱し、2x10^<-4>秒後に衝撃波管に垂直な方向からCaF_2窓をとうしてCWーCO_2レ-ザ-光を照射した。アクリロニトリルの分解はシアン化水素の生成をその基準振動に相等する赤外線の発光によりモニタ-した。まず、照射光の波長をかえて行なったが照射による分解反応への影響は見られなかった。次に、波長選択を行なわずに発振波長の全てを照射したところ、照射直後からシアン化水素による発光が増加した。このときのレ-ザ-光強度は10ー15Wで事実上気体全体を加熱するほどのエネルギ-ではない。波長を選択した場合の照射はエネルギ-が低すぎたものと思われる。 以上のように、分解寸前まで加熱した分子の振動モ-ドにわずかなエネルギ-を与えると分解が起こることを確認し一応の目的を達成した。今回用いた分子が振動励起モ-ドと反応モ-ドとのカップリングが必ずしも良いとは考えられないため、よりカップリング効果のよい分子を用いて照射光の波長依存性を調べる必要がある。
|