研究概要 |
プロトン転移反応に及ぼす添加物効果をその触媒効果と関連づけて研究する目的で従来から利用している超音波パルス法装置に加え超音波共鳴法の装置を制作した。すでに本補助金によって購入したフリクエンシ-シンセイサイザ-を手製の共鳴セルと接続し4MHzから10MHzの周波数領域で多くの共鳴線が得られることを確認している。この装置全体はパ-ソナルコンピュ-タでコントロ-ルされるように工夫してあり,測定時間の短縮と測定精度の向上に多大な貢献をしている。この測定系の製作と並行して進めたブトオキシプロピルアミンおよびエトオキシプロピルアミン水溶液におけるプロトン転移反応の速度論的研究はほぼその全容が解明され,平成3年4月又は5月に日本化学会欧文誌にそれらの結果が掲載されることになっている。さらにブトオキシプロピルアミン水溶液においてプロトン転移反応に加えイオン化していないアミン分子の会合解離反応に基づく緩和現象を見出した。この緩和はアミン分子の疎水性が大きい場合にのみ観測され,非水溶媒中では見出されないことからアミンの疎水性相互作用によるものであると考えている。この研究は分子集合体の速度論的研究に新しい知見を与えることができると考えている。プロトン転移反応に及ぼす添加物効果のうちポリビニルアルコ-ルの効果は転移反応を加速させる点で大変興味がある。プロピルアミン水溶液において重合度の異なるポリマ-を添加すると重合度に依存して加速の程度が異なることを実験的に見出した。この結果については現在論文をまとめつつある。またポリマ-の濃度依存性についても実験を経続している。一方溶質のアミンの構造の依存性を検討する目的でtーブチルアミン水溶液において同様なポリマ-効果を調べたところプロピルアミンに比べ加速効果が見られなかった。これらのことはポリマ-とアミンの相互作用が重要な要素になっていると考えられる。
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