本研究において、まずIR分光法が白金単結晶の表面構造を知る上で有益な情報を与えることを、一酸化炭素をモニター分子として示すことが出来た。最密充填構造を持ったpt(111)面や、他の(100)面、および(100)面から少しだけ傾けて切出した(11 1 1)面、(711)面をもつ電極表面上に吸着したCOの吸着状態はその伸縮振動の振動数に敏感に反映される。電位変化に伴うIR反射吸収スペクトルに現れる強度および波数の変化より、on-topおよびbridgeサイトに吸着したCOの挙動を、in situで観測することが出来た。さらに高指数面を用いた実験から、テラスとステップの間の安定化エネルギーを見積ることができ、電極電位変化に伴う強度の時間変化から、COの動的挙動を調べることでテラス、ステップの性質の相違に関する知見を得ることが出来た。双方の面上の吸着COは可逆的にサイト間移動(on-top【double half arrows】bridge)を起こすこと、そして、中間状態としてのasymmmetric bridgeサイトの存在も示すことができた。この面指数による相違により、表面に存在するステップサイト、テラスサイトの密度がサイト間移動の際に重要な役割を演じていることも サイトの形状が重要な役割を果しているもう一つの現象にSERS効果がある。SERSに必須の原子オーダーの凹凸に起因する増大機構に関する知見を得るためには、サイトの形状を明らかにすること、そして強度の励起波長依存性を測定し、ラマン散乱に関与する電子状態を見出す必要がある。そこで、まず、表面形状既知のRh(111)面にAg原子を単層電着し、表面に吸着したCOのIRスペクトルの観測により、SERS活性サイトは原子数個からなるクラスターであることを示すことが出来た。さらに、ミクロな凹凸に起因する強度増大が近赤外領域にまで達することから、クラスターの電場の寄与が存在することが示唆され、SERSの機構解明に一歩近づくことが出来た。
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