研究概要 |
天然アミノ酸のうちグリシン、アラニン,セリンをとりあげ、パリティ非保存相互作用に基づく鏡像構造間のエネルギ-差(Epv)を計算した。生物進化と関連するのは水溶液中での構造であるので、アミノ酸の双対イオン構造について、ab initio HFOー5G基底関数を用いて計算を行なった。Epvの値はその正負の符号が重要であるが、これは分子のコンホメ-ションにより変化する。そのため最も重要と思われるCーC結合軸のまわりの回転に伴なうEpvの変化を調べた。次の結果を得た。 (1)クリシンを用いた基底関数の検討では、今回使用したHFOー5Gは同程度の大きさの他の基底関数に比べてEpvを正しく与えることが明らかにされた。これはHFOー5Gが原子核上の関数値を正しく与えることに起因する。 (2)LーアラニンではCーC結合のまわりの回転角θの値によってEpvの符号が変化したが、最安定コンホメ-ションであるθ=0において負の値となった。したがってLーアラニンはその最安定コンホメ-ションにおいてDーアラニンよりエネルギ-が低い。 (3)LーセリンについてもLーアラニンと同様の結果であるが、特にθのほとんどの値に対してEpvが負であることが示された。このことはL体がD体に比べてコンホメ-ションに依存せず常にエネルギ-が低い可能性を示唆している。
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