研究概要 |
トランスアルケニルボロン酸のエステル(1の置換パタ-ン)がシモンズ・スミス法によって実際に収率よくシクロプロパン化できること,またそのようにして生成したシクロプロパンボロン酸は中性条件下での酸化反応によってスム-ズにシクロプロパノ-ルに変換できることが明らかとなった。その際に,光学活性なジオ-ルのエステルとして不斉修飾した反応基質を用いることによって実際に不斉シクロプロパン化が可能なこと,そのためのジオ-ルとしては天然に存在する安価な酒石酸のアミドが大きな不斉誘起の効果を示すことを明らかにし,既に一部論文誌に発表した。反応基質としてシス2置換アルケニル誘導体(すなわち6__〜の置換パタ-ン)のシクロヘキセニルボロン酸エステルを用いたり,光学活性ジオ-ルとして極性基をもたない2,3ーブタンジオ-ルを用いたりすると不斉誘起の効率が目立って低下することなどから,反応機構についての示唆を含む重要な知見が得られた。また,この反応はシクロプロパン化試剤の種類にも鋭敏で,ヨウ化メチレン/亜鉛・銅カップルの代りにヨウ化メチレン/ジエチル亜鉛を用いた場合には不斉収率は目立って低下した。さらに,まだ一例ながら,ヨウ化メチレン/サマリウムを用いると不斉誘起の方向が逆転するという予想外の結果も得られており,選択性発現のメカニズムとの関連においても興味がもたれるので,平成3年度には従来の計画(この反応で得られた光学活性シクロプロパノ-ルのレジオ選択的開環反応の検討)に加えて,このサマリウムを使った系の反応についてさらに検討を続けることを考えている。
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