研究概要 |
1.架橋化合物の転位反応を活用した系統的な縮環天然物合成法を発展させるために、基本架橋系であるビシクロ[2.2.2]オクター5ーエンー2ーオン類の新規合成法を開発した。 ピナコ-ル型転位反応を利用して、Cー1橋頭位にメトキシ基をもつビシクロ[2.2.2]オクター5ーエンー2ーオンのメトキシ基をアルキル、アリ-ル、水素で置き換える「形式的な橋頭位置換法」を既に開発しているが(橋頭位置換法ーA)、今回はCー1、Cー4両橋頭位にメトキシ基をもつ基質を用いてCー4橋頭位を含めた両法の橋頭位での置換法を開発した(橋頭位置換法ーB)。このことにより,ビシクロ[2.2.2]オクター5ーエンー2ーオンの任意の場所での各種置換基の導入が原理的に可能となった。 2.これら橋頭位置換法の有用性を実証することを目的として以下の天然物合成を進めた。 (1)橋頭位置換法ーAとオキシコ-プ転位反応を組合せて、コパエン、イランゲン型セスキテルペンの立体分岐合成を試みた。既にイランゲン合成に成功している。現在、コパエンの合成と酸化度の高いイランゲン型魚毒活性天然物の合成に全力をあげている。 (2)橋頭位置換法ーBと代表的な光化学反応であるオキサジパイメタン転位を組み合わせてアンギュラ-トリキナン類の全合成を進めている。すでに、ジキナン骨格形成に成功し、第三の環の効果的な構築法を開発しつつある。近い将来、数種の天然物の全合成が達成されるであろう。
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