研究概要 |
安定化が期待できる交差共役化合物であるセスキフルバレンに対応する単環性大員環のみから成る化合物に関する系統的研究は全く存在しない。本研究では,13員環および15員環から成るフルバレン1__〜の合成研究を行なった。1__〜に類似の化合物の合成は光反応や熱分解反応により試みられているが,多くの場合生成物の不安定性のため不成功に終わっている。1__〜の合成には,段階的な方法を採用した。下記の経路からわかるように,すでに合成を完了しているシアノホルミル〔13〕フルベン2__〜から出発してWittg反応によりもう一方の15員環を構築することを計画した。二重結合が多く存在するため,シスおよびトランスの幾何異性体が3__〜で2種,5__〜で4種,6__〜で8種の混合生成物になると予想されるが,目的物の骨格構築が確実に見込める経路である。予想通り,3__〜で2種の異種体の分離精製を行い,また,5__〜で生成する4種の異性体のうち,カラムクロマトグラフィ-と分別再結晶を繰返すことにより2種の異性体を分離精製することに成功し,それらの構造を完全に決定することができた。5__〜およびその異性体の混合物のまま反応を進め,‘HーNMR,IR,UV,スペクトルなどの測定からジアセチレン体6__〜を含むと思われる混合物を得た。現在,6__〜から1__〜の最終の分子内カップリング反応の条件を検討中である。
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