研究概要 |
三環性大環状共役化合物の合成に関する報告例は皆無であり,その性質を検討する目的で,[14]アヌレノ[16]アヌレノ[14]アヌレン(1)の合成を試みた。McMurryの条件(Ticl_3ーLiAlH_4)によるアルデヒド体の還元的カップリング反応やWittig縮合反応を利用する方法,いずれによっても,(1)の単離確認には至らなかった。又,大員環のみから成る交差共役化合物の性質を検討する目的で,[13][15]フルバレン誘導体(2)の合成研究も行なった。ケトン類の還元的交差カップリングを初めとする直接環化法を種々検討したが,Wittig縮合反応を繰返し応用する段階的骨格構築法により(2)を得ることに成功した。MS,NMR,UVを初めとする各種スペクトルにより構造決定を行なったが,満足的な元素分析値も得られるなど,(2)は比較的安定な化合物である。しかしながら,この熱的安定性にもかかわらず,特に, ^1Hおよび ^<13>CーNMRスペクトル測定結果から,両構成環が共に14π電子系となる分極構造の寄与はかなり低く,(2)は,実質上,ポリエン性化合物であることが示唆された。現在,このことを更に確めるために,X線結晶解析を検討している。
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