研究概要 |
ベンゼン誘導体でかつ直接共鳴の完全に消失したY値の理想系として本年度に最初に取り挙げた、1,1,3,3ーテトラメチルー2ーインダニル系の各種溶媒中におけるソルボリシス速度の2ーアダマンチルのY値によるWinsteinーGrunwald型溶媒効果解析の結果は、Kc基質の溶媒依存性挙動を示さず、置換基効果解析の結果と併せて、単純イオン化機構ではなくβ位メチル基関与機構であると言う結果が得られた。従って、Y値の基準系となり得ないことが判明した。逆に、ベンゼンπー共役系のαーtーブチルベンジルトシレ-トの溶媒効果解析では、2ーアダマンチルおよび1ーアダマンチルエチルトシレ-トとほぼ1:1の直線関係が得られた。 ^<18>Oーラベルトシレ-トを用いたOースクランブル実験では、意外にも全溶媒中で多量のリタ-ンが観測され、しかも溶媒により2倍程度の差異がみられ、見かけの速度にある程度の補正の必要性が出てきたものの、各溶媒中におけるリタ-ンの割合はアダマンチル系と殆ど同じであり、これら3系間の傾斜1.0の直線関係が保たれた事とは矛盾しない。新たに、トリアニシルおよびジメチルアニシルビニルトシレ-トの溶媒効果解析の結果、これらビニルカチオン系が、ネオフィル系と同程度かむしろそれ以上の非常に強いπー共鳴安定化を持つ系である事が分かった。以上の事実から、ある程度のπ系共鳴安定化の影響は溶媒効果には現れず、πー共鳴因子によるスプリットは強力な共鳴安定系において初めて見られる事が推定される。非常に強い共鳴安定化系、pーメトキシネオフィル系のソルボリシスの溶媒効果と、αーtーブチルベンジル系の溶媒依存性との比較からベンゼンπー系共鳴安定化新因子の抽出、定量化が可能であり、この新因子パラメ-タ-を加え修正WinsteinーGrunwald型溶媒効果直線自由エネルギ-式の一般的適用を行なった。
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