研究概要 |
虚血性心疾患の原因である高コレステロ-ル血症を治療,予防するためには,コレステロ-ル生合成の律速酵素であるHMGーCoA還元酵素を阻害することが本質的であり,これらの阻害剤の研究開発が活発に行われてきた.この中で,コンパクチンを筆頭とするメビノイド類はすでに臨床にも用いられ,生理学的にも合成化学的にも注目を浴びている化合物群である.本研究の目的はこれらメビノイドの新しい合成法を創出する事にあった. メビノイドは構造上2つの部分,ヒドロナフタレン部とラクトン部とに分けられる.合成は,ヒドロナフタレン部を構築後,ラクトン部を結びつけるという経路を取った.ヒドロナフタレン部の合成には,二重マイケル反応を,ラクトン部の合成にはアセト作酸エステル等価体とのアルド-ル反応を,鍵反応として用いた.アセチルシクロヘキセンとクロトン酸メチルとの反応により2つの不斉点が制御され,かつ必要な官能基を備えたナフタレン誘導体を合成する事ができた.これらの官能基を手掛かりにナフタレン部の酸化度を整え,また異性化,反転により残る3つの立体化学を整えた.光学分割の後,得られたナフタレン部とアセト酸酵エステル等価体とのアル反応は望む立体配置の付加体を優先的に与えた.最後にsyn選択的な還元反応によりラクトン部の立体化学を整え,(+)ージヒドロコンパクチンの合成を完了した.また,ナフタレン部へ新たな二重結合を導入する事により(+)ーコンパクチン合成の可能性を示した.この様にして所期の目的を達する事ができた.
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