研究概要 |
土壌細菌Agrobacterium rhizogenesを接種したシソ科植物アジュガAjuga reptans var.atropurpureaの毛状根の組織培養を用いて,20ーヒドロキシエクジソン等の植物エクジステロイドの生合成研究を実施し下記のpositiveな結果を得た。 1.本実験系が生合成研究に適しているか否かを判断するために,まず(2ー ^<13>C)酢酸の取り込み実験を行った.この結果,(2ー ^<13>C)酢酸は効率よく取り込まれ,得られたエクジステロイド類の ^<13>CーNMRパタ-ンから一般的なイソプレイドの生合成機構が確認された.24位のアルキル基は酢酸由来ではないこと(恐らくメチオニンから)も併せて示された.なお, ^<13>C標識酢酸のエクジステロイドへのpositiveな取り込みは今までに報告はない. 2.コレステロ-ル,デスモステロ-ル,シトステロ-ルなどのステロ-ル類のいずれからエクジステロイド生合成の分岐が始まるのかを調べるために,まず,(26,27ー^<13>C_2)コレステロ-ルを化学的に合成した.他のステロ-ル類の安定同位体標識化合物も一部合成した. 3.上記 ^<13>Cーコレステロ-ルを用いて効率よい取り込み条件の設定研究を行い,0.5%Tween80水溶液として投与するのがよいことを見いだした。本条件で得られた20ーヒドロキシエクジソンの ^<13>Cーnmrにより ^<13>Cは20%ものenrichがあった.4.以上の成果より,本実験系は従来の昆虫や植物を用いた実験系と比べて遥かに,エクジステロイドの生合成研究に適していることが示された.放射性同位元素を必要とせず,安定同位元素 ^<13>Cや ^<12>H標識化合物での取り込み実験が可能となったことは特筆に値する. 4.A,B環ーシス構造の生合成の詳細なメカニズムを探るために,重水素nmrによる追跡実験のための基質(3αー ^2H)ー,(4βー ^2H)ー,および(4αー ^2H)コレステロ-ルを合成した.
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