研究概要 |
海洋生物は陸上のものに比較して、相当長い炭素鎖からなる有機分子を産生する。イワスナギンチャク毒パリトキシン、抗腫瘍物質ハリコンドリンはそのよい例である。高次炭素鎖化合物と名づけたこれら海洋生物の特徴的代謝産物は、単に50〜115個の炭素鎖を持つだけでなく多くの官能基を有し構造が複雑であり注目されている。本研究ではこのような高次炭素鎖化合物を渦鞭毛藻から抽出、単離、構造決定し、その性質、反応を研究し、そのなかから一般的な基礎概念を発現する。 昨年度渦鞭毛藻の一種を培養し、すでに18mgのポリエ-デル系物質を単離した。分子量は3200と様当大きく構造も複雑である。紫外吸収スペクトルから共役系は存在せず、 ^<13>CーNMRスペクトルから二重結合は少なくとも10個以上存在することが推定される。本年度はES培地約150lを調整し培養した結果、藻体を湿重量で60g得た。これを75%メタノ-ル水溶液に浸しながら乳鉢ですりつぶし暗所で冷浸した。3日間放置後、口過濃縮し粗抽出物を得た。これをポリスチレン樹脂、ODS系カラムで精製を繰り返し、水溶性ガラス状物質を得た。急性毒性および細胞毒性が認められ、現在その活性機序について検討している。2級メチル基が3個存在し、トランスオレフイン1個が ^1HーNMRスペクトルから推定された。これ以外はメチレン領域,エ-テルもしくは水酸基のつけ根のプロトン領域に相当多くのしかも重なりあったシグナルが観測された。現在分解反応を検討している。分解反応はシンビオトキシンと名づけた本物質のポリアセテ-トをオゾン分解ーNaBH_4還元し分離する方法を採用している。本年度はさらに培養効率を高めるために、培養液中に各種植物ホルモンを添加したが、顕著な結果は得られなかった。シンビオトキシンは高次炭素鎖化合物としては最も大きな分子であり、パリトキシン研究の経験を生かし、構造解明を急いでいる。
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