研究概要 |
プレ-トの沈み込み帯において、火山は沈み込んだプレ-トまでの深さが100ー150kmの場所で、海溝に平行に分布している。火山岩の化学組成や同位体組成を調べると、沈み込む海洋プレ-トに由来する成分が混入していることが示され、その混入の度合は海溝から遠去かる火山程小さくなる。しかし、プレ-ト沈み込み開始直後の沈み込み帯においても、直下に海洋プレ-トが存在しないにも拘ず、火山は海溝に平行に分布している。このような例としては、世界中でも日本の西南日本弧に限られている。西南日本弧ではフィリピン海プリ-トがユ-ラシアプレ-トに沈み込んでいるが、沈み込み開始が数〜1Ma前と新しいため、沈み込んでいるプレ-トは海溝に近い所までしか延びておらず、火山帯直下には存在しない。 本研究では、西南日本弧に産する火山岩の^<87>Sr/^<86>Sr比を詳細に測定し、マグマの源物質の同定を試みてマグマの成因を検討した。西南日本弧の火山岩の^<87>Sr/^<86>Sr比は0.7035ー0.7066の範囲であり、世界中の沈み込み帯でみられる値から少し高い値へと分布していた。また、地域的に異った値を示しており,西側の九州地区では0.7040ー0.7048,中央部の西部中国地方では0.7035ー0.7039,東側の近畿〜中国地方では0.7048〜0.7066であった。さらに、多くの沈み込み帯でみられる島弧に直交する方向での^<87>Sr/^<86>Sr比の規則的な変化は見られなかった。このような特徴は、沈み込んだプレ-トに由来する成分が寄与していないことを示しており、プレ-トの沈み込み開始直後の火山活動では、局所的な地殻物質成分の寄与が顕著であることが明らかになった。このようなマグマ活動はプレ-ト衝突帯におけるマグマの生成と似ている可能性がある。
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