研究概要 |
ジルコニウム(IV)の各種有機試薬およびフッ化物イオンとの混合配位子錯体の生成について、イオン選択性電極を用いる電位差滴定法によって系統的な検討を行った。アミノポリカルボン酸の中で供与原子の数が8であるDTPAの場合に混合配位子錯体の生成が起こりにくいことを見い出したので、これを用いてZr(IV)共存下でのイオン選択電極によるF^ーの定量法を確立することができた(Analyst,1991)。 一方、HEDTAのように共存原子の数が少ない配位子の場合、かなり安定存混合配位子錯体の生成することがわかった。そこで、イミノニ酢酸ユニットを有する発色試薬であるキシレノ-ルオレンジとのZr(IV)錯体を選びフッ化物イオンの比色定量試薬としての可能性を検討した。この過程で、Zr(IV)ーXO二元系で生成する錯体に関する10以上のすべての報告に、実験上およびデ-タ解析上の誤りがあることを見出した。Zr(IV)ストック溶液の加水分解・反応速度・広いpHおよび金属:配位子比率等に留意して測定を行った結果、この系では1:1および1:2錯体が生成する・反応速度が非常に遅い・pHが低い場合には1:1錯体は定量的には生成しない・1:2錯体の安定性は更に低きそのモル吸光係数は1:1錯体の2倍より小さい等の点を明らかにした。 これらの知見に基づいてフッ化物イオンとの反応を検討し、10^<ー4>moldm^<ー3>レベルのフッ化物イオンを定量できる条件を見出した(Anal.Chem,発表予定)。この系では混合配位子錯体の安定性が低いために高い感度を得ることができなかった。そこで一つの配位子で二つのZr(IV)と反応し、フッ化物イオンがその両金属中心と相互作用できるような試薬を合成し、その二元系・三元系での反応・比色定量への応用について現在検討している。
|