研究概要 |
本研究は,従来岩石・鉱物学的知見より非平衡隕石と分類されてきた隕石が、化学的にどのような特徴をもつのかを明らかにし,両者(岩石鉱物学と化学)により得られる知見の関連性を考察することを目的とする。本研究を実施するに当り,本年度は次の2点について検討を行った。 1.非平衡隕石の非破壊中性子放射化分析 南極大陸で発見・回収された隕石(南極隕石)のうち,オ-ディナリコンドライトと分類される隕石のなかから,岩石学的分類でタイプ3に対応する非平衡コンドライトを中心に約30個の隕石試料を用いて,その化学組成を非破壊中性子放射化分析法により求めた。得られた結果を岩石学的タイプごとに比較した結果,平衡ー非平衡コンドライト間で揮発性の比較的低い元素で存在度に明らかな差が認められた。このことより,これら揮発性の比較的低い元素(中揮発性元素)の存在度に基づいて,隕石の非平衡性を論ずることが可能であることが明らかになった。 2.中揮発性元素の放射化学的中性子放射化分析法の開発 上記1の結果に基づき,隕石の非平衡性を論ずるのによい指標となりうる元素としてインジウムと亜鉛を選び,その感度の高い迅速分析法の開発,及び検討を行った。これらの元素の隕石中での含有量は,インジウムがppb,亜鉛がppmの桁と極めて少さく,また分析に用いうる隕石試料量も限られる(通常100mg以下)ことから、感度の高い分析法が要求される。そこで放射化学的分離操作を伴なう中性子放射化分析の適用を検討し,満足すべき結果を得た。この方法は,両元素とも比較的半減期の短い放射性柱種を用いることから定量を迅速に得ることができるという特徴がある。今後隕石試料に本分析法を適用し,得られた結果に基づき、隕石の非平衡性を論づる予定である。
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