研究概要 |
本研究は天然物中の希土類元素に随伴するイットリウムの定量を行いイットリウムと希土類特に重希土類元素との相関を求めるものである。通常の岩石や隕石(コンドライト)中では、Yと重希土特にHoとはイオン半径が等しいためにY/Ho比は太陽系の元素存在度比と変わらない。しかし原始的な炭素質コンドライト中のインクル-ジョンでは重希土の間で著しい存在度異常が観測されている。この際Y/Hoがどのように変動するかを追跡することを目的としており、原始気体の凝縮による高温鉱物の生成の機構を推論することができると期待される。希土類元素は全領域にわたって放射化分析法が広く実施されているが、Yのみは適当なガンマ線放射能を生成しないためにあまり測定が行われていない。しかし生成したYー90のβ線はEmax=2.3MeVで最高であり、共存する希土類と区別してβ線測定を実施し得ることを認めた。予備実験により普通のGM計数管でも適当な吸収板を組合せ、さらに壊変を追跡することによって、地表の岩石や隕石について良好な結果を得た。これを1mg程のインクル-ジョンに拡張して適用する方策を検討した。まず大型(5",井戸型)のNaI(Tl)カウンタ-を保護計数管として、逆同時計数をとることによって、自然計数を3cpm以下におさえると共に、ガンマ線、特にLaー140による妨害をγーγ,βーγ逆同時計数によって1/3以下におとすことができた。更にQガスフロ-計数管を適用して自然計数を1cpm以下とすることができた。更にこの方法を半導体検出器の導入によりベ-タ線分光法に発展させる用意を行った。検出器として、厚さ2mmのSi(Li)半導体検出器を採用し多重波高分析を実施すると共に、保護計数管を2台とし4π逆同時計数を行い、Yー90に対する感度を格段に増大させる見込みが得られた。現在具体的な実例に適用する条件を検討中である。
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