研究概要 |
本研究は、希土類元素(Ln)の分離におけるキレ-ト剤(A)とクラウンエ-テル(CE)の競合反応の効果を調べる目的で行った。実験は、単一相にA(色素)とCEを溶解しLnーA錯体の吸光度を調べる手法1、二相(有機相ー水相または樹脂相ー水相)にCEとキレ-ト剤を加え、Lnの分配率を調べる手法2により行った。購入備品の振とう恒温湯および試薬送液ポンプは手法2の実験で使用した。1.A(色素)とCEの競合反応:(1)色素、CE、溶媒、共存塩の種類を変化させた結果、LnーCE錯体の安定度、共存塩の溶解度等を考慮して、TAC、18ークラウンー6(18C6)、メタリ-ル、リチウム塩の系を選んだ。(2)リチウム塩の濃度を変化させた結果、(ア)塩濃度に関係なく、LnーTACまたはLnー18C6錯体の安定度は、原子番号の増加と共にそれぞれ増大または減少すること、(イ)イオン強度の増大と共にTAC錯体の安定度は減少するが、18C6錯体のそれは増大することが判った。2.溶媒抽出:(1)18C6の1,2ジクロロエタン溶液(0.01M)を有機相とし、トリクロロ酢酸リチウム溶液(2.5M,pM2.2)を水相としてLnの溶媒抽出を行った結果、La、Ce、Prの順に抽出率が低下することが判った。(2)さらにキレ-ト剤としてNAT(1x10^<ー3>M)を水相に加えCeとPrについて抽出率を調べた結果、Ceは変化せず、Prのみが抽出率を低下させることが認められた。すなわちCeとPrのNTA錯体と18C6錯体では、その安定度がそれぞれPr>Ce、Ce>Prとなるため、競合反応の結果、両者の抽出率の差を広げ、分離係数が増大することを示した。3.液体クロマトグラフィ-:18C6をシリカゲルに結合させた市販樹脂カラムを用い、種々のリチウム塩を含む溶離剤を用いて、La、Ce、Prの分離を試みたが、保持時間には差は認められず、樹脂相への分配が困難であることが判った。条件等をされに検討中である。
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