研究概要 |
平成2年度の研究概要と成果は以下の通りである。 (1)代表的な火山性酸性地域である恐山周辺の硫気荒原で,土壌・植生調査を行った。土壌については,30ー40cm長の土壌コアを酸性度の異なる地点から8本採取し,一般化学性(pH,交換性塩基,交換性Al,CEC,塩基飽和度,CとN含量など)の他,元素や種々の硫黄化合物(硫酸,元素状硫黄,硫化物,黄鉄鉱及び有機態硫黄)の濃度を測定して,それらの土壌中での鉛直・平面分布特性を明らかにした。調査地域では,土壌は極度に酸性化し(最低土壌pH:2.6),元素が土壌から著しく溶脱していた。観察された元素の溶脱し易さの順序は,Zn>Ca>Sr>Mn>Rb>Fe,K,Cu>Pb>Al>Siであった。 (2)火山性酸性土壌(13試料,pH:2.8ー3.9)と対照土壌(9試料,pH:4.1ー4.7)から土壌有機物(腐植酸とフルボ酸)を常法により抽出,精製した。 (3)土壌有機物に含まれる硫黄含有官能基の分析法を確立した。本研究で分析が可能となった官能基は,ーOSO_3H,ーSO_3H,及びーCーSーCーである。分析法の概略は次の通りである。ーOSO_3H:5M塩酸がこの官能基を選択的に加水分解することを利用して分析する,ーSO_3H:Ba^<2+>が強酸性官能基(ーSO_3H+ーOSO_3H)に選択的に結合することを利用してその合計量を先ず測定し,ーOSO_3H含量を差し引いて求める,ーSH:DTNB試薬と反応させ,生成した発色物質を有機溶媒に抽出分離して分析する,ーCーSーCー:全有機硫黄含量から前記3種類の官能基含量を差し引いて求める。
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