研究概要 |
平成3年度に実施した研究内容と成果は以下の通りである。 1.平成2年度に確立した土壌有機物の官能基,特に硫黄含有官能基の分析法を用いて,火山性酸性土壌と対照土壌から抽出・分離した土壌有機物(腐植酸)の官能基組成を分析した。 2.酸性土壌試料を採取した地域の代表として青森県恐山を選定し,酸性降下物の組成と降下量を測定した。 3.以上の調査・研究から,酸性土壌試料を採取した殆どの地域は,硫化水素(亜硫酸ガスは少ない)で常時暴露された地域で,その暴露量は多い地域では2000μgーS/cm^2/mon.にも達することが分かった。また、その様な地域の酸性土壌から分離した腐植酸は,0.56±0.21%(13試料の平均)の全量S,0.53±0.19%の全有機S,0.28±0.16の炭素鎖S,1500±360ppmの硫酸エステルS,740±610ppmのスルホン酸S,270±110ppmのチオ-ルS,及び350±170ppmの無機S(パイライトなど)を含んだ。対照土壌の腐植酸と比較した結果,火山性酸性土壌では,炭素鎖S,スルホン酸S,及びチオ-ルSの含有量が高く,硫酸エステルSは殆ど差がなかった。硫化水素は土壌や植生の表面で迅速に硫酸イオンに酸化されて土壌に負荷されるが,それは土壌微生物バイオマスなどを経由して腐植物質などに取り込まれ,CーS結合を作って土壌有機物に比較的高濃度で保持されていることが分かった。一方,硫酸エステルSは酸加水分解を受け易く,強酸性土壌では不安定となるので,負荷された硫黄がこの形態で保持される可能性は低い。
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