研究概要 |
過剰のフェロセニルアルキルアンモニウムカチオン誘導体,Fe(C_5H_5)[C_5H_4(CH_2)nN^+RR'_2]X^-(n=1,2;R,R'=H,Me;X^-=I^-またはCl^-),を含むエタノ-ル溶液中にVOPO_4・H_2O・EtOHを懸濁させて、室温にて3日間攪拌することにより、層間化合物VOPO_4・H_2O・[Fe(C_5H_5)(C_5H_4(CH_2)nN^+RR'_2]χ(χ=0.17-0.45)を得た。フェロセニル基あるいはヨウ化物イオンによってバナジウム(V)が還元されて、カチオン分子がVOPO_4層間に挿入される。これらの層間化合物の層間の広がりが10.9-13.0A^^°になるものと5.8-6.2A^^°のものとが得られた。-NH^+_3基および-NHMe^+_2基を有するフェロセン誘導体の挿入は前者の場合であり、-NMe^+_3基を持つ化合物の挿入は後者である。すなわち、前者ではアンモニウム基がバナジウム(IV)位置に接近できて、フェロセニル化合物分子がVOPO_4層に垂直に近い形で配向するのに対し、後者ではフェロセニル化合物がVOPO_4層に平行に配向する。また、フェロセニル中心がバナジウム原子に接近できる配向の分子では、フェロゼン環が酸化されてFe(III)状態で存在し、バナジウムから離れている場合にはフェロセン環はFe(II)状態であることをESRならびにX線光電子スペクトルによって確認することができた。 ゲル状V_2O_5もVOPO_4と同様に層状構造を持っており、上記のフェロセニル誘導体の挿入を行った。フェロセニルアルキルアンモニウムカチオンのフェロセン核はどの層間化合物においても酸化されており、また、挿入した分子はV_2O_5層に平行に配向する。隣接するバナジウム原子間隔が短かいことが影響している。
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