研究概要 |
層状構造を有まるバナジルリン酸塩VOPO_4へのフェロセン、そのアルキル誘導体およびアルキルアンモニウムカチオン誘導体の挿入反応を行い、層間化合物VOPO_4・H_2O・(FcR)x〔Fc=(C_5H_5)Fe(C_5H_4ー);R=H,Me,Etおよびー(CH_2)nNR'R"_2^+,n=1,2;R'R"=H,Me;x=0.17ー0.45)を得た。フェロセン核あるいはアンモニウムカチオン塩の対イオンであるヨウ化物イオンによってバナジウム(V)が還元され、層間へフェロセン誘導体が挿入する。VOPO_4層間でのフェロセニウムアルキルアンモニウムカチオンは、VOPO_4層に垂直に近い形で配向するものと平行になるものとがある。ーNH_3^+基およびーNHMe_2^+基はバナジウム(IV)に接近することができて前者の分子配向をとり、ーNMe_3^+基はそのかさ高さによってバナジウムに接近できず、フェロセニルアルキルアンモニウムカチオン分子全体として層に平行に配向する。また、フェロセニル中心がバナジウム(V)に接近できるかどうかによってFe(III)ーフェロセニウム核あるいはFe(II)ーフェロセン核として層内に存在することがわかった。バナジウム(IV)イオンによるESRシグナルの線幅が、近接する常磁性のフェロセニウム核により著しくブロ-ド化する。これは常磁性イオンによる速いスピン緩和のためであり、バナジウム(IV)ーフェロセン核の接近とESR線幅との対応をつけることができた。層状構造をとるゲル状V_2O_5についても同様の層間化合物を得た。フェロセニルアルキルアンモニウムカチオンは、鉄の酸化をともない層に平行に配向する。V_2O_5では隣接するバナジウムの間隔が短かいことが大きく影響する。VOPO_4およびV_2O_5層間での分子配向と電子状態は、バナジウムへのフェロセニル中心とアンモニウム基の接近の程度により決まることが明らかになった。
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