炭素ーリン結合は比較的強固な結合で、通常は切断されにくいが、最近我々はPd錯体が触媒作用として働きαーケトホスホネ-ト(RC(O)P(O)(OR)_2)のPーC結合活性化を伴った脱カルボニル化反応をすることを見いだした。そこで以下の点について研究を進めた。 1.Ni錯体とαケトホスホネ-トとの反応 Pd以外の遷移金属錯体の触媒能を探るため、O価のNi錯体であるNi(cod)_2(cod=1.5ーシクロオクタジエン)と種々のαーケトホスホネ-トとの反応をPPh_3共存下調べた。その結果橙黄色結晶のNi錯体を収率65ー89%で得た。スペクトルデ-タより、得られた錯体はαーケトホスホネ-トのC=O部分がNiにπ配位した(PPh_3)_2Ni(η^2ー(CO)RC(O)P(O)(OR)_2)であることがわかった。また(PPh_3)_2Ni(η^2ー(CO)EtC(O)P(O)(OMe)_2)についてXー線結晶解析を行い、その構造を確認した。この錯体は比較的安定で、Ni錯体はPーC結合を切断しないことが分かったが、Pd錯体触媒による脱カルボニル化反応の第一段階がαーケトホスホネ-トのC=Oπ配位であることが示唆された。 2.Pd錯体によるαーケトホスホネ-トの脱カルボニル化反応活性種 PdR_2L_2(R=アルキル基、L=3級ホスフィン)によるαーケトホスホネ-トの脱カルボニル化反応速度をベンゼン中とTHF中で比較した。その結果、非配位性溶媒であるベンゼン中の方が速く反応することが分かった。またベンゼン中ホスフィン共存下で同様の反応を調べたところ、ホスフィンは反応を阻害することが明かとなった。以上の結果より、14電子種のPdL_2が触媒活性種となり、この錯体にαーケトホスホネ-トのPーC結合が酸化的付加して反応が進行していることが示唆された。
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