研究概要 |
1 酸化ビスマスの多形の1つδーBi_2O_3は酸素欠陥蛍石構造をとり,酸素イオンによるイオン伝導体として知られているが,730℃以上の高温でのみ安定に存在する。そこでTeO_2およびSnO_2を添加することによって安定化することを試みた。Bi_2O_3:TeO_2=3:2の組成のものは815℃に重量減少を伴なう構造相転移を示した。粉末X線回折パタ-ンおよび ^<125>Teメスバゥア-スペクトルの測定から,低温安定相はテルルは6価で存在し、長周期構造をもつ斜方晶のBi_6Te_2O_<15>と同定された。一方,900℃から水中へ急冷することによって得た高温安定相はδーBi_2O_3と同じ酸素欠陥蛍石構造をとり、単位格子あたり4個のBi^<3+>のうち1個がTe^<4+>で置換された構造をもつ。そのため、平均で2個あった酸素欠陥位置のうち1/2個が酸素イオンで占められることになるが、Te^<4+>の分極率はBi^<3+>と同様大きく,酸素占有位置に空孔は多く残っているので,δーBi_2O_3と同様,この化合物は高いイオン導電率を示すことが期待された。 2 上記Bi_6Te_2O_<13>化合物のテルル1原子をスズで置換し、もっと安定なイオン伝導体を合成することを試みた。Bi_2O_3,TeO_2,SnO_2を3:1:1の割合で調製したものを,急冷および徐冷することにより試料を得た。粉末X線回折パタ-ン, ^<119>Snおよび ^<125>Teのメスバゥア-スペクトルより,急冷した試料は立方晶蛍石構造をもつBi_<10>Te_2O_<19>と立方晶パイロクロア構造をもつBi_2Sn_2O_7との混晶であった。また、徐冷して得た試料はBi_2TeO_5とBi_2Sn_2O_7との混晶であった。いずれもスズ原子は立方晶蛍石構造をとらず,パイロクロア構造のBi_2Sn_2O_7として存在することが明らかになった。これはSnーO結合TeーO結合に比べて共有結合性が大きいためであると考えられた。
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