研究概要 |
1AgIーAuI混合系およびAg_2XーAu_2X(X=S,Se,Te)混合系は,高温相(イオン伝導相)ではαーAgIおよびαーAg_2Xと同形の体心立方晶をとるが,低温相(絶縁相)ではβーAgI+βーAgAuI_2およびβーAg_2X+βーAg_3AuX_2の混晶となることが明らかになった。そこでβーAgAuIおよびβーAg_3AuX_2(X=S,Se,Te)の ^<197>Auメスバゥア-スペクトルを測定した。その結果,AgAuI_2ではAu原子はヨウ素2原子と直線2配位構造をとり、AuI結晶に比べてかなり大きな共有結合性を示した。すなわち、Ag^+[IーAuーI]^ーのようなイオン結晶として存在する可能性を示唆した。一方,Ag_3AuX_2(X=S,Se,Te)では,カルコゲンXがS,Se,Teの順にAu原子との共有結合は急激に大きくなり,Au原子の内殻の5d電子が結合に寄与することが明らかになった。また,別の安定相AgAuSについても,Au原子はAg_3AuS_2と同じ電子状態にあり似た結合をしているものと考えられる。Ag_2TeとAg_3AuTe_2の ^<125>Teメスバゥア-スペクトルの測定より,両化合物のTe原子は同じ電子状態であることが示唆された。 2酸素イオン伝導体であるδーBi_2O_3にTeO_2およびSnO_2を添加して安定化を試みた。3Bi_2O_3ー2TeO_2の組成のものは815℃に構造相転移を示し,粉末X線回析パタ-ンおよび ^<125>Teメスバゥア-スペクトルの測定から,低温相ではテルルは6価で存在し,斜方晶のBi_6Te_2O_<15>と同定され,急冷して得た高温相ではテルルは4価で存在し,立方晶のBi_6Te_2O_<13>と同定された。この高温相はδーBi_2O_3と同じ酸素欠陥蛍石構造をとり,単位格子あたり4個のBi^<3+>のうち1個がTe^<4+>で置換された構造をもつことが明らかにされ、安定な酸素イオン伝導体であることが期待された。この高温相のテルル原子1個をスズ原子で置換した複合酸化物の合成を試みたがスズはパイロクロア-構造をもつBi_2Sn_2O_7となり、酸素欠陥蛍石構造をもつ安定な酸化物は存在しないことをつきとめた。
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