研究概要 |
鉄(II,III)イオンに中間的な強さの配位子が混合配位した錯体は温度や圧力の変化に伴って高スピン( ^5T_2)と低スピン( ^1A_1)間をスピンクロスオ-バ-することがある。本研究では、強さの異なった配位子(例えば、1,10ーフェナントロリン(phen)、2,2'ービピリジン(bpy),2,2'ービピラジン等)を鉄(II)イオンに混合配位させることにより中心鉄(II)イオンに作用する配位子場の強さを制御し、混合配位による配位子場の強さが磁気転移点(T_c)にどのような影響を及ぼすかを ^<57>Feメスバウア-スペクトルおよび磁気モ-メントの温度変化の測定により調べた。一連の鉄(II)錯体中の混合配位子錯体[Fe(bpy)(phen)(NCS)_2]では、強さの異なった配位子が混合配位することによりスピンクロスオ-バ-転移がより緩慢になり、また転移温度は中心鉄(II)に配位する配位子の電子的性質ばかりでなくその構造によっても影響を受けることが分かった。さらに、金属クロロフィル類およびプルシアンブル-類似化合物におけるスピンクロスオ-バ-現象(あるいはスピン平衡)を ^<57>Feメスバウア-分光法、NMR、X線光電子分光法などにより検討した。その結果、高スピン状態の鉄(III)クロロフィルはピリジンおよびその誘導体が軸配位すると自動還元により低スピン状態の鉄(II)クロロフィルになることが見いだされた。また、プルシアンブル-類似化合物に真空下で熱処理を施すとシアノ配位子がフリッピングを起こして混合原子価状態が出現することなどが確かめられた。これまではメスバウア-分光法を中心とした測定手段により温度変化に伴うスピンクロスオ-バ-転移について調べてきたが、さらにダイヤモンドアンビルセルを使用した高圧下の ^<57>Feメスバウア-スペクトルの測定により圧力変化に伴うスピンクロスオ-バ-転移を研究していく予定である。
|