2座配位ホスフィンを配位子とする白金錯体〔Pt(Diphos)(RNC)^2〕〔PF^6〕^2(Diphos=Ph^2P(CH^2)nPPh^2)、=1、2、3)の水銀電極による電解還元をおこなった。一電子還元に相当する電気量を通じると、金属一金属結合を有する〔Pt^2(Oiphos)^2(RNC)^2〕〔PF^6〕^2が比較的高収率で得られた。π=1錯体ではDiphosが2個の白金に架橋した構造をもち、π=2および3では1つの白金にDiphosがキレ-トした構造をもつことがわかった。さらに、これらの2価錯体を1.5電子還元に相当する電子量を通じるとn=1および2の錯体では〔Pt^3(Diphos)^2(RNC)^4〕〔PF^6〕^2の組成をもつ錯体が生成した。n=1では白金3個からなるAーframe構造をもつ錯体で、この錯体は相当する2核錯体にPt^3(RNC)^6を反応させても得られる。n=2では白金が直線状にならびに両端の白金がDiphosでキレ-トされた構造をもつことがわかった。また、これらの2核および3核錯体において、1つの白金を含む3個の平面は互に直交した構造をもつことがXー線結晶解析により明らかになった。n=3では、n=1あるいは2つの場合とは異なり、RNCが2個少ない組成をもつ〔Pt^3(Diphos)^2(RNC)^2〕〔PF^6〕^2が得られた。この錯体はXー線結晶解析の結果、n=2の錯体と同称、白金が直線状に並び、両端の白金にDiphosがキレ-トした構造をもつが、中央の白金は配位子をもたない“裸"の白金となっていることがわかった。このような“裸"の金属を分子中にもつ錯体は初めての例である。また、通常2価白金3核錯体においてはそのValence electron は42ないし44であるが、この錯体は40電子で、欠電子錯体である。この錯体は固体触媒における活性点周辺 存在する金属サイトの電子状態を推則する上でのモデルとなる重要な錯体であると考えられる。
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