本年度の研究計画と比べて、部分的な遅れはあったが、全体としては順調に進み、計画以上の成果が得られた。 1.8配位錯体および2配位錯体の配位構造に関してすでに得ている結果を予定通り論文にまとめた。これらの論文を来訪したTaube教授(ノ-ベル賞受賞者)および研究代表者が訪問したコペンハ-ゲン大学Schaffer教授に見せて、内容および発表方法について助言をいただいた。それらの助言をとりいれ、8配位錯体に関しては、補足研究を行った後に論文を書き直すこととし、2配位錯体については、評価の高かったアルカリ土類金属ハロゲン化物の構造に重点を置いた新しい論文原稿の執筆にとりかかるとともに国際会議に発表の申込をした。 2.3配位錯体の配位構造に関しては、CIF_3分子がT字形構造をとり、その結合角が90゚より小さくなることを角重なり模型による考察から明らかにすることができた。 3.4配位錯体の配位構造に関しては、中心イオンの電子配置と配位構造の関係を明らかにした。すなわち中心イオンの電子配置が低スピンd^8またはd^9の場合平面型をとるほかは、一般に四面体型が安定であること、s^2配置の場合にはSF_4分子で代表される特異な形をとることを角重なり模型に基づいて示した。 4.本年度の計画には含まれていなかったが、さらに5配位錯体の配位構造に関する研究に着手し成果を得つつある。18電子殼配置の中心イオンの場合には一般に三方両錐型が安定であり、d^8配置では三方両錐型と正方錐型との選択が微妙であり、s^2配置では正方錐型が安定であることを角重なり模型による考察から明らかにした。 5.新規購入のパ-ソナルコンピュ-タ-は研究効率の改善に役立っているが、このコンピュ-タ-の性能にふさわしいソフトウェアの購入に手間取っており、本格的な高度の利用は来年度になる見込みである。
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