研究概要 |
本年度は、前年度に引き続きAegilops cylindrica染色体を添加したパンコムギのChinese Springの子孫からの染色体欠失系統の育成を行った。その結果、本報告書作成段階で(1992年2月)、欠失染色体がホモ接合、ヘミ接合、ヘテロ接合の系統が、合計384得られた。その内訳は以下の通りである。第1同祖群(1A,1B,1D):ホモ接合36、ヘミ接合5、ヘテロ接合14。第2同祖群(2A,2B,2D):ホモ接成36、ヘミ接合8、ヘテロ接合10。第3同祖群(3A,3B,3D):ホモ接成35、ヘミ接合5、ヘテロ接合1。第4同祖群(4A,4B,4D):ホモ接合38、ヘミ接合5、ヘテロ接合12。第5同祖群(5A,5B,5D):ホモ接合37、ヘミ接合14、ヘテロ接合18。第6同祖群(6A,6B,6D):ホモ接合22、ヘミ接合4、ヘテロ接合17。第7同祖群(7A,7B,7D):ホモ接合53、ヘミ接合3、ヘテロ接合11。この内遺伝子地図作成に利用できるホモ接合及びヘミ接合の欠失系統の数は、前年度の165から301に増加した。欠失系統の育成は、現在も継続して行っているので、上記の系統数はすぐに変更されると予想される。 本年度は、育成した欠失系統を使って、deletion mappingによる遺伝子地図作成をいくつか行ってきた。第1は、花粉稔性を支配する遺伝子について、その座位を4B染色体短腕の約16%の末端領域に特定したことである(論文として発表)。第2は、Ae.kotschyiの雄性不稔細胞質に対するパンコムギの稔性回復遺伝子について、その座位を1B染色体付隨体のほぼ中央に位置づけたことである(論文投稿中)。この他、アルファアミラ-ゼ遺伝子については、岐阜大学の古田喜彦教授との、DNAプロ-ブを用いたdeletion mappingは、カンザス州立大学のDr.B.S.Gillとの共同研究がそれぞれ進行中である。
|