近縁アブラムシでありながらアリ共生型と非共生型に分化したTuberculatus quercicolaとT.querciformosanus(寄主:カシワ・ミズナラ)、Macrosiphoinella yomogicolaとM.hikozanensis(ヨモギ)、Aphis citricolaとA.agrimoniae(チョ-センゴミシ・キンミズヒキ)、Neocalaphis magnolicolensとN.magnoliae(ホオノキ・キタコブシ)について形態や行動を比較し、次のような結果を得た。1.形態上、共性型を特徴づける共通形質は認められない。2.網をかけ、アリや天敵類が近づけないようにした枝上でも、共生型であるT.quercicolaやN.magnolicolensのコロニ-は成長する。このことは、従来の説通り、アリによる天敵類からの保護が、アブラムシとアリの共生を促していることを示唆している。3.そこでアリに対する天敵類の反応を観察した。主な天敵は、クサカゲロウの幼虫.ナナホシテントウの成虫、ハナアブの幼虫.コシボソアナバチであったが、いずれもアリによって直接捕食されることは極めて稀である。しかし、捕食量は明らかに減少する。また、ハナアブでは、産卵のためにアズラムシのコロニ-に近づく成虫が攻撃をうけやすい。つまり、アリは、天敵による捕食と産卵を妨害することによってアブラムシに利益を与えている。4.非共生型のT.querciformosanusやN.magnoliaもこれらの天敵類に捕食されるが攻撃される頻度や被食率は、共生型近縁種より有意に低い。これには、共生型よりコロニ-サイズが小さく天敵誘引率が低いことや、行動がやや敏捷であることなどが原因しているように思われる。5.網かけをしたA.citricolaとM.yomogicolaのコロニ-も初めの数日間は成長するが、やがてカビ類の発生によって崩壊する。以上の観察から、共生型アブラムシの進化には、形態的要因よりも、コロニ-サイズ、天敵、生息環境などの生態要因や行動習性上の要因が、より強くかかわっているように思われる。
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