研究概要 |
植物群落の構成個体の動態は個体の枯死による減少と実生あるいは萌芽による増加によって維持されている。研究対象にしているスダシイ・タブノキ優占林での過去19年間の枯死個体数は1989個体(200m^2あたり)で,新生個体数は1825個体であった。本年度はその枯死の原因を探るために各個体の受光エネルギ-の量の測定を行った。本年度の枯死個体数は168個体で、明らかに腐朽菌による枯死が26.8%,残りは食害や落枝による失葉,光不足などによる生産と消費のバランスの消失が原因と考えられる。枯死はおもに夏期に集中し,腐朽菌による枯死が8月初〜9月中に64.4%,その他の原因による枯死が7月初〜9月中に57.6%あった。各個体の精算受光エネルギ-量の日平均は1990年4月5日〜1991年1月28日までの間に,生個体で0.673(MJ/m^2),腐朽菌による枯死個体で0.712(MJ/m^2),光不足などによる枯死で0.580(MJ/m^2)であった。各値は直達日射エネルギ-の日平均(12.996MJ/m^2)の5.2%,5.5%,4.5%に相当した。各個体の精算受光エネルギ-量と伸長成長量との関係もみた。その結果、生個体の70.5%は0.601〜0.800(MJ/m^2)の日平均光エネルギ-を受けているが,20.9%はそれ以下,8.6%はそれ以上の光エネルギ-を受けている。その受光エネルギ-による伸長成長量を前年の高さに対する比であらわすと,88.3%が0〜20%の伸びをしたにすぎない。とくに伸長成長しない個体が32.7%もあった。逆に高さを減少させる個体が7.8%もあり,この林の林床に生産する多くの個体が光不足などのために枯死するまでに結果しないもでも,伸長成長をほとんど行えない状態にあることがわかる。しかし、個体数は少いが,とくに萌芽個体において光環境とは無関係に大きな伸長成長をする個体がある.今回得た受光エネルギ-の計算には日平均気温を用いたが,実際には林内気温あるいは使用したフィルムの温度を用いることが必要である。次年度に解決したい。
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