研究概要 |
植物群落の構成個体数は枯死による個体数の減少と実生・萌芽による増加によって維持される。研究対象の極相林では20年間に2,113個体の減少と1,914個体の加入があり,毎年構成個体の約10%が交代した。本年度の枯死数は102個体で、腐朽菌による枯死が32.4%、残りは光不足、食害や枝の落下による失葉などの生産と消費のバランスの消失が原因であった。腐朽菌による枯死は夏に集中し、他の原因での枯死は春〜秋にあった。昨年度と同様に、ジアゾ系色素(PAN)の光エネルギ-による退色を利用して受光エネルギ-量の測定をした。各個体の平成3年1月〜平成4年1月の間の日平均積算受光エネルギ-量は生個体が0.717(MJ/m^2)、腐朽菌による枯死個体が0.775、他の原因による枯死個体が0.552であった。各値は日平均直達日射量(15.7MJ/m^2)の4.56%、4.93、3.51に相当した。生個体と他の原因での枯死個体の受光エネルギ-量には明らかに差があり(t検定)、おもに光不足であると考えられる。しかし、アオキ、トベラ、タブノキ、スダシイなどは測定数の20%以上が枯死し、また枯死までの受光エネルギ-量も種(アオキ、ヤブニッケイ、トベラなどは0.6〜0.7MJ/m^2、スダシイ、タブノキは0.5、ヤツデは0.6)によって違いがあった。それは、光ストレスに対する耐性が種やAgeによって差異があることを意味する。どの種も50%以上の個体はプラスの樹高・直径成長をし、萌芽個体の割合の高いタブノキ、スダシイ、アオキなど以外の種の90%以上の個体の成長率は20%以下であった。この小さな成長率は絶対的に少ない受光エネルギ-量が原因と思われるが、受光エネルギ-量の違いと成長率の違いが結びつかなかった。弱光条件下では、受光エネルギ-量の違いが樹高・直径の成長に支配的でないとすれば、他の波長域の光エネルギ-量と他の要因、土壌要因を測定し、それらとの関連を検討する必要があるだろう。
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