1。アリ類の産卵能の資料を整備しておくため、日本産各種の卵巣小管数を解剖して調べた。女王、職蟻の両者とも調べ得たのはハリアリ亜科6、フタフシアリ亜科16、ルリアリ亜科2、ヤマアリ亜科17の計41種である。女王の小管数の最小はウロコアリの2、最大のアメイロケアリの200以上であった。女王と職蟻の小管数が等しい種、職蟻の小管数が1に減少している種、職蟻は卵巣を欠如する種の3群に大別出来た。 2。卵巣小管数調査に付随して、マルピギ-氏管数についても資料を集積出来た。これからするとフタフシアリ亜科は他の亜科と異なる傾向をもつようで、今後精査する価値がありそうである。 3。卵の形と大きさの調査を行い日本産38種の資料を得た。卵型と腎臓型が大部分だが、トゲオオハリアリの棒状、ヒラズオオアリの紡錘型など特殊な形のものもあった。女王蟻の体重と卵重の比から、大卵化または小卵化した種が明瞭となり、それらの繁殖様式との対応関係の調査が必要となった。また女王が産む栄養卵もツヤオオズアリ(未授精女王)、シリアゲアリ類、シワアリ類、ケアリ類など10種で確認した。 4。飼育実験観察では、ケアリ類2種のコロニ-創成時の幼虫養育にはたす栄養卵の寄与の程度を確かめる実験を開始し継続中である。また行動観察面では、オオハリアリのコロニ-では若令幼虫に職蟻が卵を与えて養育していることがわかった。職蟻は卵巣を欠くので、この卵は女王由来のものであり、しかも複数の女王が存在し、その間に優劣関係があるようである。トゲオオハリアリについては、全個体に標識をつけ、年齢と分業 順位の関係を追跡中である。順位系列に長期間とどまるエリ-ト的個体と通常個体に分けられるようである。年齢と行動内容を追跡中である。
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