ホタルの発光コミュニケ-ションについてはすでにOhba(1983)が日本産ホタルについて6型を認め、その実態が解明されたが、本研究によりさらに詳細な知見が加わった。特に沖縄県西表島で新たに発見されたホタルの雌は誘引行動と抱卵行動時に、発光部位を全く変えることが明かになった。この発光行動は本研究費により購入されたリレ-レンズ(VTRカメラとノクトビジョンを中継するレンズ)を駆使することにより完全に記録され、解析された。行動様式により、発光の部位を使いわけるホタルはこれまで全く知られていなく、ホタルの発光行動の進化を考察する上で重要な知見となった。さらに、ホタルの対捕食者実験を実施し、いくつかの捕食者は明かな忌避行動を示した。さらに、生態的に、また発光パタ-ンが異なる類似したホタルの発光パタ-ンを比較検討しその相違を明らかにした。遺伝的研究については、ゲンジボタルやヘイケボタル、ヒメボタルなどで実施し、全国各地の集団が地域特有の遺伝的背景を有していることが明かになった。これらの結果は1990年の動物学会・昆虫学会・動物行動学会で発表した。今後、更に琉球列島に分布する各種ホタルについてアイソザイムの比較検討を実施し、遺伝的距離を把握するとともに、発光コミュニケ-ションとの関係を比較検討したい。またゲンジボタルの分布拡散経路を明かにするために、ミトコンドリアDNAについても研究を進めたい。
|